Japanese Association of Family Therapy
一般社団法人 日本家族療法学会

沿革

多職種の会員で構成された学会

学会の設立から今日まで

 本邦における家族研究は,1960年代中頃から日本大学医学部,慶応大学,京都大学の研究グループを中心にした統合失調症の家族研究にその源流をさかのぼることが出来ます。中でも,1970年代後半から関東の有志が集まって統合失調症の家族研究や家族療法をテーマに「関東家族病理・家族療法研究会」という研究会が開かれていました。その後の家族問題への社会的な関心の高まりや,欧米における家族療法の発展を背景に,この研究会の運営の中心であった鈴木浩二,牧原浩,下坂幸三,川久保芳彦,渋沢田鶴子,秋谷たつ子,広瀬恭子,中村伸一,石川元、狩野力八郎の各先生方が中心となって,1984年1月に日本家族研究・家族療法学会が創立され,同年5月に本学会創立大会が開催され,国立国府台病院(当時)の高臣武史先生が初代会長に就任されました。この創立大会には,米国から構造的家族療法の創始者であるS. Minuchin博士を招いて講演とワークショップが開催されました。

 以後,毎年全国各地での年次大会,地方での家族療法セミナーと合わせて、特に鈴木浩二先生のご尽力により、J. Haley, P. Watzlawick, M, Andolfi,K. Tomm, T. Andersen, M. Whiteら海外の著名な講師を多数招聘しての講演やワークショップを開催してきました。これらを通じて、医療のみならず教育、福祉、司法・矯正など様々な領域における家族支援・家族臨床の深化に努めてきました。

 海外との交流にも力を入れ,2002年の横浜における世界精神医学会(WPA)でのシンポジウム(Family Research and Investigation)、2006年の神戸における世界心身医学会でのシンポジウム(Family Therapy for Families Presenting Physical Symptoms)の企画をはじめ,2002年には韓国の家族治療学会との初の合同カンファレンスを開催し,以後2年に一度両国において交互に開催することとなり,その後、台湾も参加して現在ではJKTカンファレンスとして毎年、日本→韓国→台湾の順番で開催され交流を深めています。また、Asia Academy of Family Therapy(AAFT)、Consortium of Institutes on Family Limited (CIFA)には、本学会の会員も中心メンバーとして参画し、今日までアジア地域の家族療法の普及に貢献しています。

 社会的な活動としては,1995年に起こった阪神・淡路大震災に際して,その後3年間にわたり阪神・淡路大震災支援委員会を設置して,被災地において主に援助スタッフへの援助を目的とした定期的なワークショップを開催しました。その活動の記録は「喪失と家族のきずな」(金剛出版,1988)として出版されました。この経験と成果は、2004年の新潟中越地震そして2011年の東日本大震災における支援活動にも引き継がれ、以後、特に残された家族の「あいまいな喪失」への理解と支援の重要性に着目した活動を展開してきています。

 教育・研修の充実に向けた活動は2002年より本格的に開始され、家族療法を学ぶための専門書・論文案内の書籍、家族面接ビデオの刊行を行いました。その後、2011年には他関連学会でも類を見ないほどの高レベルの学会認定スーパーヴァイザー制度を構築しました。2013年には学会編による家族療法テキストブックを刊行し、2017年からは基礎講座の開講と共に学会認定ファミリー・セラピスト制度が開始されています。

 2018年、本学会は、長年の懸案であった法人化を実現し「一般社団法人 日本家族療法学会」として、家族療法のさらなる展開に向けて再スタートしました。

【学会出版物】
家族療法セミナー1「家」と家族療法(金剛出版 1987)
家族療法セミナー2 家系図と家族療法(金剛出版 1988)
喪失と家族のきずな(金剛出版 1998)
臨床家のための家族療法リソースブック、総説と文献105(金剛出版 2003)
実録・家族療法(中島映像教材出版 2004)
説き明かし・私の家族面接-初回面接の実際(中島映像教材出版 2010)
家族療法のスーパーヴィジョンー統合的モデルー、R.E.リー、C.A.エレベット、福山和女、石井千賀子監訳(金剛出版 2011)
家族療法テキストブック(金剛出版 2013)

発展に貢献してくれた会員の皆様

一般社団法人日本家族療法学会の設立と発展は多くの先人たちのおかげです。
多くの先生方によって本学会は発展を続けています。

 鈴木浩二先生、下坂幸三先生、牧原浩先生、狩野力八郎先生、中釜洋子先生、高橋規子先生、五十嵐善雄先生ら、他界した多くの先生方によって本学会は設立から今日まで支えられてきました。今は会えない先人達も私達のこころの家族です。現在の学会には先生方が注いでくれた知恵、熱意、そして希望が生き続けています。

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