- JAFT評議員になって 植村太郎(神戸労災病院・精神科)
- JAFT評議員になって 吉野淳一(札幌医科大学)
- JAFT評議員になって 小森康永(愛知県がんセンター)
JAFT評議員になって
植村太郎
(神戸労災病院・精神科)
この度、縁あってJAFTの評議員を務めることになりましたので、現在の心境等を述べさせていただきます。
最初に謝っておきます、ごめんなさい。約1年前に吉川悟先生にお声をかけていただいたわけですが、その時からずっと自分で良いのかという気持ちが消えません。私JAFTの大会で演題発表したことがありません。司会/座長的な仕事を数回させてもらっただけです。器ではないという表現がありますが、評議員のような責任の伴う仕事は、やはり自分には不向きなのではと感じております。
一方で、縁は大切にしなければという思いもあります。10数年前東京で東豊先生のワークショップに初めて参加した事、それが縁で数年間松蔭女子大で精神医学の講義を担当した事が思い出されます。大学病院の内科で摂食障害の治療のサポートをした時は、下坂幸三先生の著作に助けられました。最近では勤務先の近隣の、3〜4の臨床心理系大学院から実習生を受け入れていますが、彼らの物の見方が個人療法ベースに偏りがちだと感じることが多く、時間のある限りシステムズアプローチの考え方を紹介したり、家族面接の大切さを強調したりしています。
縁ということなら、私が医局に入った時の教授、中井久夫先生について最後に触れたいと思います。先生は青木病院時代統合失調症患者の家族と定期的に面談されていました。時には激しいやり取りが起こることもあったようですが、この時代についてJAFTとして先生にインタビューできないかというのが、今の私のささやかな希望です。
JAFT評議員になって
吉野淳一
(札幌医科大学)
この度、家族研究・家族療法学会の新評議員となりましたので、現在の心境を述べさせていただきたいと思います。
北海道地区では、長いあいだ、金田迪代先生のもと家族療法に接し家族療法を学ぶ風土が築かれてきたと認識しています。その金田先生はまだまだお元気に第一線で活躍されていらっしゃいますので、まさか私に評議員の役が回ってくるとは思っていませんでした。人は受け入れがたい事実にぶつかると何らかのストーリーをつくって事態に対処するといいます。そういう意味では、今回の事件?は、自らの依存的な体質からそろそろ脱却しなさい、いくつになったと思っているのか、という教えなのかもしれないと想像を巡らせるなどしております。第27回福島大会での初の評議員会は、不安と緊張で何が話されたか思い出すのも難しいくらいですが、著名な先生方をこんなに間近にすることができるだけでもすごいことです。その昂りを評議員の役割を果たす方向の活力にうまくつなげたいものです。北海道は、先の金田先生のおかげで新しい動きに積極的に取り込んでこられたと思っています。特にナラティヴ・セラピー、ナラティヴ・アプローチに関する動きを追うなかで多くの先生方とお知り合いになり、学ぶ機会をいただいてきました。大らかで進取の気性に富んだ大地にいることを恵みとして、今後も大先輩の中野に師事しながら家族研究・家族療法学会の動向を敏感に北海道に運び込む役を務めたいと思います。よろしくお願いします。
JAFT評議員になって
小森康永
(愛知県がんセンター)
再登場と言うと聞こえはいいが、評議員の仕事は端で見ているより大変だしそれなりの責任も伴う以上私のような者には不向きと遠慮すれば良かった、と今でも感じている。それでも無選挙地区なので、猫の手よりはましかとも思う。
さて、「MRIでなんでナラティヴなんですか?」というのはたまに訊かれることだが、私自身の理解ではまったく矛盾はなくて、今も、企画から十五年、日本版が原本(当時はウィークランド論文集)に先駆け完成してからでも十年が経ってようやく刊行された”Focused Problem Resolution: Selected Papers of the MRI Brief Therapy Center”という実質、ジョンとディックの論文集を訳している最中で、そのカバーにでも、とパロ・アルトらしい街角の写真を撮りに出かけた帰りに、ジョンの未亡人アンナとも会ってきた、というのが家族療法家らしい近況報告。フリーウェイ101を下りて立ち寄ったMRIで、外来表に知った名前と言えば、East Palo Altoにもコミュニティ実践を拡大しひとり気を吐くカリン・シュランガーとBTC初代メンバーのひとりアーサー・ボーディンだけで、新しい世代の動向を知らない私はちょっとさみしい気がしたけれど、アンナはガレージをアトリエに改築してまだまだ創作に励んでいると聞き、ちょっと励まされる。ああ、そうだ。こんなふうに「ちょっと励まされる」学会というのはいいなあ。