パンデミック中は、家族間での距離の取り方や、コミュニケーションに悩む人は少なくないでしょう。そのようなパンデミック中の家族間のコミュニケーションのヒントとして、Pauline Boss博士からUniformed Services Universityの精神医学部門が出している「Managing family conflict while home during covid-19(コロナ禍での家族間対立のマネージメント)」*)というリーフレットを紹介して頂きました。
このリーフレットでは、「共通の生活空間で一緒に過ごす時間が急激に増えることは、家族の一体感を促進するだけでなく、親密なパートナーの間でストレスや対立が生じる可能性がある」と述べ、家族のコミュニケーションについて、いくつか工夫点を推奨しています。
1)積極的に傾聴する
- 反論するのではなく、相手を理解しようと努めましょう
- 誤解が生じていないか、相手の話を正しく理解できているかを、聞いて確かめましょう
- コミュニケーションをとることを難しくしている否定的な意見や誤解に気づいて、対処していくことも大切です (例えば、あの人は私の話を聞かない など)
2)問題解決
- 何を話し合うのかを決めましょう
- お互いの意見を出し合って、解決策のリストを作りましょう
- 妥協点を探り、双方が合意できる提案をしましょう
(例えば、月曜・水曜・金曜の夜は、私が料理を作り、あなたは子どもたちの世話をする等) - しばらく実践したあとで、そのまま継続するのか、変更すべきかを話し合いましょう
3)自己調整(自分の心を調整する)
怒りが強すぎる時は、上記の傾聴や問題解決だけでは不十分です。そのような時は、自分の心を落ち着けるための自己調整が必要となります。マインドフルネスのエクササイズが役立つかもしれません。
4)タイムアウト法の利用
- 自分の感情の強さを監視して、必要に応じて、相手にタイムアウト(一時的にその場を離れること)を要求しましょう
- タイムアウトの合図を家族で決めて、家族のすべての人に奨励しましょう
(例えば、手で「T」をジェスチャーするなど) - 議論を再開するまで、別々の場所にいって、冷静になるために何らかの方法で、自己調整を行いましょう。
- 合意した時間に戻って、双方が心の準備ができていることが確認できた場合にのみ、話し合いを再開しましょう
家族だからこそ支えや頼りになる反面、家族だからこそ葛藤や気遣いが生じることもあります。お互いの距離をうまく保ち、自分の心を調整するように心がけて、家庭が少しでも居心地の良い場となるように家族全員が努めていくことが大切です。
災害支援委員会 瀬藤乃理子
(福島県立医科大学医学部 災害こころの医学講座・2022年3月)