一般社団法人SST普及協会
会長 丹羽真一
このたび、一般社団法人SST普及協会は、2020年12月5日よりSST (Social Skills Training)の和語を、社会生活スキルトレーニングと変更することに決定しました。そのことについてのお知らせと、今後、この和語の使用と周知をお願いしたく、紙面をお借りしてお伝えさせていただきます。
SSTの和語としては「生活技能訓練」という用語が広く用いられており、1994年以来の診療報酬の算定に際しても「入院生活技能訓練」の用語が使用されています。当協会はこれまでSSTの普及と発展に向け取り組んできておりますが、この度、協会内での議論や当事者の意見を取り入れて和語の変更に踏み切りました。
変更の主な理由は2つあります。ひとつは「生活技能」という言葉の範囲が広く、そのためSSTの日本への導入当初、整容などADLの範囲の行動までSSTの対象とされたりしていました。それ故当協会では「社会生活技能」という言葉を研修会などでは使用を勧めてきました。ソーシャルスキルとは「私たちの感情や要求を正確に人に伝えるうえで助けになり、対人的な目的を達成することを可能にするすべての行動」と定義されており、認知機能も含めた対人的コミュニケーションの受信、処理、送信のスキルを指しています。それで、今回より原語に近いものとして、社会生活スキルを採用しています。
変更のもうひとつの理由は「訓練」という言葉の一種強制的、指導的意味合いの払拭です。「技能訓練」というとどうしてもスキルの向上だけを目指すイメージですが、元々その目的は日常生活の質を高め、その人がより健康的な生活を営むことです。また近年では、医療の分野のみにとどまらず教育、司法・矯正、市民生活の領域へと拡がり、内容も生活上の問題解決、疾患の自己管理などへ拡大しています。現在当協会では、これらSSTの発展に合わせてEmpowered SST(e-SST)を提案しています。e-SSTは、自ら学ぶことを基本にして、ほとんどの場合、何らかのスキルを学びたい人と、それを支援する人は横並びの関係で、その共同創造の場において、当事者が自ら問題解決に取り組む学習方法で、「訓練」とは少し違うイメージです。そのためトレーニングという言葉を採用しました。
以上の通り、今回の変更はSSTをより時代に即したものとして発展、普及することを目指しており、皆様方に用語変更にご理解とご賛同をいただくとともに、SSTを通して、当事者やご家族の皆様方がリカバリーの道を歩んでいくことを、心より願っております。
なお詳しくはSST普及協会ホームページhttps://www.jasst.net/をご参照ください。