Japan Association Family Therapy

News Letter No.66 (2009/03/03)

第26回ひろしま大会にご参加下さい

第26回大会長 村上 雅彦
(広島ファミリールーム)

第26回ひろしま大会のテーマは、『家族;命のつながりと変化のうねり』です。近年ますます家族の重要性が社会で認識されるようになっていますが、それに伴い、家族療法に対する社会の要請も大きくなっていると感じられます。一方、現代の家族、社会で起きている問題は多様化していますし、質が変わってきているのではないかと感じさせられることもあります。果たして、これまでの考え方での治療や支援のあり方で有用な援助を作り出すことができるのでしょうか。今大会では、こうした家族・人・社会の変容に対して、どのように家族療法を展開発展させていけばいいのかについて考えていきたいと思っております。

プログラムの全容もほぼ決まって参りました。近く第二報を皆様のお手元にお届けする予定です。既に、大会のホームページには順次アップしてきておりますので、是非そちらをご覧下さい。大会ホームページはこの学会のホームページから入ることができます。

大会の成否は、参加のみなさまにかかっております。演題申込、参加申込が多数でありますよう、実行委員一同心待ちにしております。何卒よろしくお願い致します。

なお、演題(一般演題・研修症例・自主シンポジウム)の申込み、大会参加申込みなど、すべて、大会ホームページからしていただくことになっておりますので、よろしくお願い致します。演題申込みは1月15日が締め切りです。また、大会参加申込みは2月1日開始の予定です。事前申込み期限は4月末日の予定ですのでご注意下さい。なお、ワークショップの申込みについてですが、部屋の関係でそれぞれの募集人員に限りがあります。先着順で受け付け致しますので、希望のワークショップがありましたら、早めにお申込みいただきますようお願い致します。

これから求められる家族療法家~診療所に勤務する心理職の立場から

医療法人社団康心会ティーエイチピーメディカルクリニック
AGP(同性愛者医療・福祉・教育・カウンセリング専門家会議)
金城 理枝

「こんな研修会があったらいいな」というテーマでのご依頼を頂きました。せっかくの機会ですので,心理職の立場から,そして身近な点から書いてみたいと思います。

昨年,「ジェンダー/セクシュアリティと家族臨床」と題した大会ワークショップを企画・開催する機会を頂きました。これまで,「ジェンダー」と「セクシュアリティ」は各々自主シンポジウムという形で開催して参りましたが,もっと研修形式で基礎から学びたいというご要望を多数頂き,ワークショップという形で実現することができました。その背景には,性同一性障害で注目されるジェンダー医療をはじめ,男女差により注意を払った性差医療が現場へ導入されつつある動きがあるように思います。そして,今までは大学病院が中心となって担ってきたこういった「特別な」医療サービスを,地域医療で補う動きも活発化してきたように感じます。

現場で働く心理職は,裏方ですが,診療をスムーズするため,医師やワーカー,看護師らへの橋渡し役を求められることが多く,コミュニケーションのプロと見られることが多いとの印象を受けます。特に,近年,ワーカーが複雑化した福祉制度の説明や申請に追われる中,こういった調整役を担うことが結果的に増えてしまったのかもしれません。

こうした様々な背景が後押しして,多様な家族への対応が求められ,またそれらに特化した知識を学び,技術を磨く必要があるのではないかと考えます。

例えば,夫が性別適合手術を受け,女性になったことにより,家族の中に母親が二人になってしまった家族への面接,離婚後同性パートナーと同居し子育てをすることになった家族への面接,こういった「新しい」家族への対応を学ぶ場がないという声を度々頂きます。

嫁姑問題のような古典的な問題ですら,その中身は大きく変容してきています。それに加え,高齢者にかかわる家族問題も目立って増えているように感じます。

基礎をしっかり学ぶと同時に,多様な家族の問題にも対応できる力を付けたい,そんな欲張りな研修会が求められているように感じるのですが,皆さんはどのようにお感じになりますか?

現場での研修

関内カウンセリングオフィス
田中 究

仕事上、家庭訪問をする機会があります。実際に来談者の「日常」を目にすると、面接室で聞くのとは異なるリアリティが現れ、とても新鮮な感覚を覚えます。

ひるがえって、「研修会」は、常ならぬ時と場所に集まり、普段は行動をともにしていない方々とご一緒して学習するという、私たちの日常からするとやや特殊な出来事といえます。では、そこから特殊性を削ぎ落として、もっともっと受講生や講師の日常に近いところで研修会が行われたらどうだろう?と考えてみることもできます。そこで、「現場での研修」です。

【受講生の現場編】
講師が受講生の職場を訪ねて、研修を行います。典型的な研修会というと、研修会で学んだ内容を受講生が各職場に持ち帰って、その現場にあわせて修正を加える、という順番になります。受講生には学習内容を職場に合わせて修正していく責任があるのは確かですが、実際の仕事現場では、まず「職場の要請ありき」で動くことが多いのではないでしょうか。研修会での学習内容が、場合によっては実務の足かせになることがあるかもしれません。そうならないために、講師が受講生の現場を目にするからこそ見えてくるプラスアルファがあるかもしれません。講師と受講生が、受講生の現場を見渡しながら、受講生が実行可能な課題をより現場の実情にフィットした形で話し合うことができたら、今までとは異なる研修結果が期待できないものでしょうか。

【講師の現場編】
通常の研修会では受講生が各職場から切り離されているように、研修会では講師もまた各職場から切り離されていることが多いと思います。しかし、切れ味鋭いテクニックもさることながら、現場でどんな風に振る舞ってらっしゃるのか、という講師の先生方の「あり方」を加味した内容にこそ関心を持ちたくなります。講師の先生に普段いらっしゃる診察室でロールプレイをして頂く、なんて、考えただけでもわくわくしてきます。胸踊るのは、私が単なるミーハーということもあるでしょうが、テクニックが部分的に切り取られたものとしてではなく、連綿と続く日常の中で、どのようなバランスの中で成立しているかを垣間見させて頂くことができる気がするからです。

家族療法では「文脈」の重要性がずっと指摘されてきました。研修会がよりコンテクスチュアルになったら、私たちの学びはどんなふうに変わっていくのでしょうか。

IPRでロールプレイ

静岡県立吉原林間学園(情緒障害児短期治療施設)
平岡 篤武

様々な面接技法に接したり、年少時に受け持った重い被虐待の子が成人した様子を見たりという経験から、面接に関して私が今関心があるのは次の二つです。一つ目は、Wampold,B.E.やMiller,S.,Hubble,M.,Duncan,B.らが提唱している各流派の面接技法に通底する共通因子とそれを最大限生かすためにクライエントからのフィードバックを利用するアプローチ。二つ目は、ストレンクスモデルにある、クライエントの資源を引き出すという考え方です。

「こんな研修会があったらいいな」が今回与えられたテーマですが、上記に関連して以下のワークショップを考えてみました。

5~6人の小グループにトレーナーが一人ずつ付き、ロールプレイをします。トレーナーは認知療法、ソリューション、システムズ・アプローチ、ナラティヴ等いくつかの異なるアプローチのエキスパートです(余り多すぎても混乱しそうなので2つ位が良いかもしれません)。ロールプレイはIPR(Interpersonal Process Recall)方式です。これは面接の様子をビデオに撮り、面接後にセラピスト、クライエントのやりとり一つひとつについて、どういう意図の発言か?そう言われてどう思ったか?等を振り返っていくものです。トレーナーは、質問の意図、それが効果的か、他のオプションは等について特定のアプローチに基づいて質問や助言をしながら討論を深めます。1回目のIPRによる振り返り終了後、2回目に同じ配役で、1回目の討論を参考にして“やり直し”面接、1回目同様の振り返り討論を行います。この2回で1セッションです。次の配役でロールプレイを行う時に、トレーナーは隣のグループに移り、今度は別のアプローチのトレーナーによる指導を受けるという具合です。

この研修で期待できそうなことは、IPR方式で意図的な介入が訓練できること、やり直し面接を設けることで直ぐに新しく学んだアプローチの実践練習ができること、グループ体験で他者のアイディアや異なる発想から刺激を受けることができること、異なるアプローチを経験することで支援の本質や自分にフィットするアプローチについて考えを深める機会になること等でしょうか。

研修会を考えた時に真っ先に思い浮かべるのは、恩師からの次のような言葉です。「高名であるという理由だけで先生を招き、講演を聞いて分かった気になるような研修ではなく、自分たち日々の実践で生まれた課題を解消するためにあの先生に学びたい、という研修を企画して下さい。」職場での消化試合のような研修会に辟易としていた若い頃このような助言を頂き、今でも肝に銘じています。

催眠に没入しています!

長崎純心大学 人文学部 現代福祉学科
加来 洋一

催眠の研修会に最初に参加したのは、5年くらい前のことだと思う。きっかけは二つ、一つはある学会発表で、師匠と仰いでいるセラピストが「催眠をしている人なら、気づける変化です」と言った一言、もう一つは、当時勤務していた医療機関に解離性障害をもつ患者が増えてきたことだった。

最初の催眠の研修会では、当然のようにお互いの催眠のかけっこが演習として行われていて、「場違いな所に来てしまった」と後悔したこともある。しかし、催眠の導入を家族療法で使うコミュニケーションの技法に「翻訳」してみたら、導入は何とかすることはできた。その後は年に2,3回は催眠の研修会に参加してきている。

研修は、参加者同士で催眠をかけての介入のトレーニングと事例検討の2つが一般的である。催眠下での介入は、クライアントに「…が見えてきます」といった、クライアントの内的体験についての指示が中心になる。臨床の場面では、陪席している大学院生の表現でいうと、「目をつぶって座っているクライアントに話しかけ続けている」そうである。この指示の出し方も、家族療法でのクライアントの枠組みを把握してから介入する流れが援用できる(ような気がする)。

トレーニングで、10分前後の間に催眠の導入、介入、解催眠をこなすのは、実際の臨床以上に難しいと感じることもある。こういうトレーニングをこなしている最中にも、「これはシステムズアプローチで言うと…」と「翻訳」したりしている。今では催眠療法の全てを家族療法に「翻訳」できないことがわかってきたし、そのできない部分こそが家族療法では説明しきれていないクライアントの変化だと思うようにもなってきた。

家族面接の場面では催眠を用いなくても、家族のメンバーの観察の精度、コミュニケーションのとり方、指示を出すときの催眠言語の応用など、催眠の研修の成果の使い出は多い。最近は、メンバーの誰をどこで「催眠に導入しちゃろうか」と考えて家族面接に臨むようになってきた。

これからは家族療法の介入技法の一つとして、催眠をもっと有効に使えるようになりたいと思っている。

摂食障害家族の自助グループ

南浜病院
川嶋 義章

私は平成14年から摂食障害患者・家族の自助グループに参加しています。当時、摂食障害の娘さんを持つ、あるお母さんとの出会いから始まりました。そのお母さんは、以前ある都市で摂食障害の家族グループに参加したことがあり、新潟市にも摂食障害の家族のためのグループが欲しいと希望されていました。私はと言えば、それまで、大学病院で摂食障害の心理教育的家族教室を開催していましたが、一緒に運営していた同僚も転勤となり、継続するにはかなりの労力を必要としたため、教室を中断していました。

そのお母さんと話し合い、自助グループとして、会の準備・運営・連絡などは参加するご家族・当事者におまかせし、私は助言者という立場でグループを支援していくことになりました。グループは月に1回、現在まで6年間続いています。

グループに参加して、私自身、得るものがたくさんありました。医療に対する家族の生の声を聞くことができました。また同じ悩みを抱えた家族が、お互いの話を聞き、支えあったり、助言しあったりする様子を見て、家族の力を感じることができました。次第に患者本人も参加するようになり、患者が、他の患者の親に自分の体験を踏まえて助言するなど、複合家族グループの効果も実体験することができました。

グループを支援する上で気をつけていることは、あまり特定の理論や原因論に捉われないようにしていること、毎回すべての参加者が発言できるように配慮していることなどです。

このように、私自身、自助グループの力を実感していますが、新潟(おそらく大多数の地方都市でも)ではまだあまり広がっていません。理由はいろいろあると思いますが、グループを体験した患者・家族が少なく、実際にグループを希望する患者・家族が少ないこと、同様にグループの運営を支援する専門家も少ないこと、などが大きな要因と思います。

そうは言っても、患者・家族を支援する場として、グループ(自助グループであれ専門家が主催するグループであれ)の力は大きいと思います。なんとかこのようなグループが広がってくれるように、声を上げて行きたいと思います。

「編集後記」

2008年が終わり、年度替わりが目前の季節となりましたが、次年度の「ひろしま大会」の申し込みが始まっています。様々な企画と新たな取り組みへの挑戦的な内容が満載ですので、ぜひぜひホームページにてご確認いただき、会場でお会いできれはと思います。

さて、今回は少し趣向を変えて、いろいろな立場でいろいろな話題を提供していただきました。一部の読者から「マンネリ化している紙面をそろそろ変えてみてはどうか」との声がいくつか聞かれたため、委員会としては当面いろいろな企画をしてみたいと考えております。まだいろいろな企画について検討中ですので、もしも今回の内容についてのご意見や、新たな企画の可能性についての示唆をいただければ、お願いしたいと考えております。

最後になりましたが、原稿をお願いしました先生方には、大変な無理をお願いしましたこと、この場を借りてお礼申し上げます。

編集担当 吉川悟

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